書評『「自分だけの答え」が見つかる 13歳からのアート思考』

2020/10/10

書評



台風の影響で気候が変わって来ましたね。

これから秋が深まるにつれて「読書の秋」ということで、より一層投資関連書籍を読まれる方もいらっしゃるかと思われますが、書籍のジャンルに偏りは生じていませんか?

投資関連本がパフォーマンスを必ず向上させるとは限りませんし、投資スタイルとの相性によっては、かえって有害になることさえあります。

そして何よりも投資のアイデアは、世間一般には無駄と思われがちな全く関係のないところから突拍子もなく出てきたりするものです。

本日ご紹介するのは「芸術の秋」に立ち返り、アート思考を考える書籍のご紹介です。


著者の末永氏は、東京学芸大学の研究員として美術教育を研究する傍ら、附属の中学・高校で美術教師として教鞭を執っている方です。

知識・技術偏重の美術教育に問題意識を持ち、アートを通して「ものの見方を広げる」独自の教育法を展開しております。

本書は苦手意識を持つ方も多い美術という科目や美術鑑賞を通して、芸術作品からものごとを自分自身で探求する力「アート思考」を養うコンセプトの本です。

定まった正解のない世界で常識にとらわれず自分なりの視座を持ち、ものごとに取り組む力は、社会人としても投資家としても非常に重要です。

本書では、オリエンテーションと6回の講義を通して、マティス、ピカソ、カンディンスキー、デュシャン、ポロック、ウォーホルといった著名アーティストの作品を題材にアート思考を探求していきます。

著名作品の歴史的背景を説明するにあたり、比較対象の芸術作品の説明が疎かな部分もあるため、アマゾンのレビュー等では一部酷評されておりますが、アート作品自体の評価云々ではなく、その作品を通して考える力を付けるのがコンセプトです。

その時代の常識や既成概念を疑い、他の人が気がつかない価値を見出し追求していくのは、まさに投資家の投資に通じるものがあります。

上で名前をあげた芸術家やその作品がパッと思い浮かばなければ、一般教養にまだまだ伸びしろがあり、投資本よりも教養書の方に投資家としての成長のチャンスありです。

アート市場は投資家として参入するにはかなりハードルの高い世界ではありますが、よく名前の上がる著名投資家や経営者たちは芸術分野に造詣の深い方が多いのもまた事実です。

某県知事が新首相の日本学術会議の任命問題に関し「教養のレベルが露見した」と酷評したそうですが、教養は他人を見下すためにあるものではなく、自分自身の見識や能力を高めるためのものです。

一見全く価値がないように感じる何気ない事象からも、人とは異なる「自分なりの答え」を導き出せるようになれれば、自ずと結果はついてきます。

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