投資は実力も運のうち?能力主義と分断

2021/04/12

投資


日本国内でも「ハーバード白熱教室」で知られる哲学者、マイケル・サンデル教授の新著の訳書『実力も運のうち 能力主義は正義か?』(早川書房)の紹介と本人のインタビュー記事を見かけました。

人は出自によらず、努力と才能次第で成功できるという考え方が暴走し、社会を分断しかねない状況に関する問題意識を中心に、大変示唆に富んだ内容となっております。

割と投資の成功者は、能力主義の恩恵を受けていることが多いため、能力主義偏重批判に否定的で、全ての人が平等に競争できる状況を善しとしてきたアメリカンドリームに肯定的ですが、実態は既に生まれた時点で環境に大きな差がついて、歪なほどに富裕層の子女が集中する米国の名門大学の例をあげるまでもなく、学歴偏重主義と能力主義が強く結びつきすぎてしまっております。

自身の努力や才能で道は切り開けるという発想自体、恵まれた環境(金銭的な経済資本のみならず、文化資本や社会関係資本も含まれます)で教育を受けることができたバイアスなのです。

市場重視政策が取られ実力主義が強調されるようになってきたのはサッチャーやレーガンの時代からですので、まだ40年ほどしか経っていないのです。

皆が報われるような言い回しを使い始めたのはケネディ以降ですし、「努力すれば報われる」的な風潮は、実は比較的最近の現象なのです。

トランプ政権の誕生は、努力信仰によるエリート主義への反動ですし、グローバル資本主義への抵抗でした。

努力することは非常に尊いですし大切なことだと思いますが、能力主義は不毛な過当競争の末に大量の敗者を生み出し置き去りにして行く潜在性があるのです。

努力や能力による投資の成功が、必ずしも幸せに結び付くとは限らないところに、人生の面白さがあるのかもしれません。

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