書評『ROCKONOMICS 経済はロックに学べ!』

2021/06/11

書評


バラク・オバマ氏のブレーンとしてオバマ政権では財務省の財務次官補(経済政策担当)およびチーフエコノミスト、その後大統領経済諮問委員会(CEA)の委員長として辣腕を振るったプリンストン大学教授の労働経済学者アラン・B・クルーガー氏は、音楽産業にも大変精通されており「ボウイ仮説」など自説や講義にも音楽の要素を取り入れ研究されておりました。

2019年に自ら命を絶たれ、その研究成果の続きを伺うことはできなくなってしまいましたが、クルーガー氏の遺作となったロックな経済学が翻訳され日本で発売されました。


『ヤバい経済学』、『ライフサイクル投資術』、『Adaptive Markets 適応的市場仮説』など話題の経済・投資関連書籍や『まぐれ』、『ブラック・スワン』など一連のタレブ関連書籍の邦訳を手がけてきた大和アセットマネジメント(現在はGlobalXJapanに出向中?)の望月衛氏による翻訳です。

発売して二日後の書評はいくらなんでも早すぎるのではと思われる方もいらっしゃるかと思いますが、原著の方を読んでおり(といってもハードカバーではなくペーパーバック版の発売を待っていたら一年くらい待たされました笑)その当時書評にしたかったのですが、自身の能力が足らず全く力及ばずでした。

素晴らしい翻訳家との巡り合わせで、魅力がより一層引き立っていることと思います。

ロックな経済学を解く「7つのカギ」として下記の項目が序盤で登場します。

①供給と需要、その他の要因(All That Jazz)
②規模と不完全代替性
③運
④ボウイ仮説
⑤価格差別
⑥コスト
⑦お金以外の何か

当ブログではよく③運と⑦お金以外の何かを強調しますが、投資において音楽産業の最新トレンドを知っておくことは、未来の産業全体のトレンドを先取りするチャンスにつながるかもしれません。

音楽はそれ単体ではとても産業としては成り立たないのですが、音楽という題材を通して経済活動を紐解いていくと市場や経済ひいては国際社会まで様々なことが有機的に見えてくるのです。

音楽が好きな方はもちろんですが、音楽という一つのテーマを通して多様な経済学や経営戦略を考えることは、投資戦略を考える上で非常に有効ではないかと思います。

本書で「1次の隔たり」仮説と呼ばれている素性や関心を乗り越え誰もがなんらかの形でつながり一つになるテーマは、市場全体を俯瞰的に捉えるには持って来いです。

当ブログはあまり書評で押し売りをしませんが、この本に関しては是非とも手に取ってご確認頂きたい一冊です。

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