投資をする上では避けては通れない「数字」に関して、その数値や統計データが必ずしも正しいとは限らないということは、多くの方が経験するところです。
本日はそういった数字に対するバイアスを計量経済学、統計、ジャーナリズムの視点から考察する書籍の紹介です。
サンヌ・ブラウ 著『The Number Bias 数字を見たときにぜひ考えてほしいこと』(サンマーク出版)
ブラウ氏はオランダのニュースサイト・出版社「De Correspondent」の数字特派員として活動する科学研究・教育現場に精通したジャーナリストです。計量経済学の博士号を取得しておりアカデミズムのバックグラウンドがある方です。
計量経済学を専攻しているからこそ、ぶち当たった壁である数字で表すことができることの限界と、その一方で計量できた数値が世の中に与える影響力の大きさを鑑み、その欺瞞と個々人が持つバイアスをいかに認識し、数字を見たときに読み間違えない思考と視点を手に入れようという内容です。
数字が人を動かしてきた歴史や、数字は主観に基づくご都合主義なデータが採用されていたり、サンプリング調査の抽出方法による誘導のカラクリ、因果関係と相関関係の混同、ビッグデータやアルゴリズムの杜撰さなど、非常に盛りだくさんな内容になっております。
「因果関係」と「相関関係」の話はタバコ業界の話が中心に展開されており、マーケティングやパブリック・リレーションズ(PR)の教科書なんかでは割と有名なケーススタディかもしれませんが、是非統計学の視点でタバコ会社のマーケティング力と政治力の高さを実感していただければと思います。
そういったこともさることながら、数字に関するバイアスや利害関係そもそも計量できることなのかなど、投資判断を行う上で重要な事柄を学べること間違いなしです。
時間のない方は巻末にあるチェックリストだけも確認してもらえれば、数字に対する意識はだいぶ変わるかもしれません。
流石にチェックリストの全文引用は気が引けるため、項目と太字部分だけ抜粋しておきますので、詳細はぜひ書籍をお取りになってご確認ください。
チェックリスト
1.「メッセンジャー」は誰か?
…他の情報も探す
2.「私」はどう感じているか?
…自分の感情を自覚し、違う視点も参考にしよう
3.それは「標準化」されているか?
4.データはどう、「収集」されたか?
5.データはどのように「分析」されているか?
・両者のつながりがまったくの「偶然である可能性は?
・「他の要素」が関係しているか?
・原因と結果が「逆」になっている可能性はあるか?
6.その数字はどのように「提示」されているか?
・平均
・具体的な数字
・ランキング
・リスク
・グラフ